和解契約の成立

弁済を要する任意整理においては、利息制限法による引き直しをした残債務をもとに、債権者(貸金業者)と交渉して和解をまとめることになる。
過払金返還請求権がある場合は、その回収状況も加味して、依頼者(債務者)の弁済可能額を検討する。
債権者(貸金業者)との交渉においては、依頼者(債務者)の利益を確保し、その経済的更生を図れるような弁済計画を立てなければならない。
無理な弁済計画は、債務整理にあたって任意整理を選択した意義を失わせるからである。
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誰が和解契約書を作成するか

交渉がまとまったら和解契約書を交わす。
後日の紛争防止のため、和解契約書の作成・備置きは、代理人の任務として不可欠である。
では、和解契約書の作成を行うのは、債権者側か債務者代理人か、そのいずれが和解契約書を作成すべきであろうか。
一般的抽象論としては、どちらが作成してもかまわない。
ただし、相手方(債権者側)が作成した場合は、債務者代理人においてその記載内容に、過不足がないか、債務者(依頼者)の利益を確保すべく精査することを要する。
そのような債権者側作成の和解契約書の内容精査の手間を考えると、代理人において作成した方がよいという見解に至る。
債務者の利益確保の確認作業の遺漏防止には、債務者代理人が和解書を作成する方が簡易だからである

和解契約書の内容で注意しなければならない点

債権者側に必要以上に有利な内容、すなわち依頼者である債務者に不当に不利益な内容の和解をしないことである。
任意整理の利点(ソリッド)として、柔軟な解決が可能ということができる。
それ故、下記の各項目の中でも債務者に不利なものにつき、債務者に有利なものと組み合わせることで、債務者の利益を確保する方法も考えられる。
ただし、柔軟な解決が可能ということは、その裏返しとして、債権者(貸金業者)が有利な条件を引き出そうとして、あれこれ注文をつけてくることが多く、代理人として、一定の限度・枠をもって交渉に臨まないと、債務者(依頼者)の利益確保が困難に陥ることが危惧される。
具体的留意点として、以下のような項目が挙げられる。
① 元本の減額を求めること。特に一括弁済の場合に留意すること。
利息制限法引き直しの残額をそのまま元本とするのは、依頼者(債務者)にとって不利益である。
② できるだけ分割払いにして債務者自身が履行できるようにすること。
分割の回数について、 3年(36回)程度までの分割までしか、債権者(貸金業者)は譲歩しようとしないことが多いが、債務者の利益確保のだめ、可及的に長期の分割払いで和解するべきである。
③ 遅延損害金と将来社息をつけないこと。
東京三会統一基準(和解案の提示にあたっては、それまでの遅延損害金、並びに将来の利息は付けないこと)の遵守である。
④ 期限の利益喪失条項をつける場合、依頼者(債務者)に不利益にならないよう留意すること。
分割金の支払を怠った場合、何回あるいは何万円滞ったら、期限の利益を失い一括弁済しなければならないとの条項を求められることがある。
期限の利益喪失条項は、債務者に不利な条項であり、ないにこしたことはない。
また、通常1回の遅滞で期限の利益を喪失しないよう、解怠が2回以上、あるいは遅滞額が2回分以上で期限の利益を喪失するという約定に落ちつくことが多い。
なお、期限の利益喪失条項については、その約定内容によって弁済を怠ったなら当然に期限の利益を喪失する(当然失期)方式の条項と、弁済を怠った後に債権者が期限の利益喪失を請求して初めて期限の利益を喪失する(請求失期)方式の条項に区分される。
この両方式のうち、請求失期方式の方が依頼者(債務者)に利益があるので、期限の利益喪失条項を付けなければならない場合には、当然失期より請求失期の方式を選択するようにすべきである。
⑤ 公正証書作成など債権者に有利な約定を付けないこと。
依頼者(債務者)に不利益な(債権者に有利な)約定は、付けないようにすべきである。
⑥ 管轄の合意をしないこと。
債権者(貸金業者)によっては、和解による分割金の履行を怠った場合の訴訟提起につき、債権者(貸金業者)に有利な管轄の合意を行おうとする者もいる。
例えば、すべての裁判所を管轄裁判所とするとか、訴額の如何にかかわらず債権者(貸金業者)の営業所所在地の簡易裁判所に専属的合意管轄を認めるなどといった条項である。
前者については、被告の管轄の利益を奪うから無効という理屈で後日の訴訟の際にしのぎうるが、後者については無効主張が必ずしも通るとはいえない。
後者は、土地管轄の点で債務者に不利であるばかりでなく、貸金業者が従業員を許可代理人として訴訟追行ができる簡易裁判所(民訴54条)に事物管轄を認めるとの点からも債務者に不利である。
⑦ 清算条項を忘れないこと
本条項に定めるほか両者間には何らの債権債務もないことを相互に確認するとのいわゆる清算条項を入れるのを失念してはならない。
これを欠落すれば、和解契約書を交わす意味合いの大半が損なわれる。
なお、過払金の存在が疑われる場合、債務者の債務が存在しないことだけを確認する方法も検討すべきである。
⑧ 取引開始時期の記載をすること
債権者(貸金業者)の取引履歴開示がすべてなされたのか疑問が残る場合等に備えて、和解契約書中に取引開始時期を記載させ、後日これと異なる証拠が発見された場合、和解契約の効力を争いうるようにしておくことも検討すべきである。
⑨ 証書の返却、完済証明書の発行等依頼者が再度請求を受けないための手段を講じておくこと
代理人が任務を終了し代理業務を離れた後、依頼者(債務者)が、貸金業者から請求されるような事態に立ち至らないよう、契約書や債権証書の回収、完済証明書の受領等の手当を講じておけば、より万全である。
⑩ 合意書の取り交わしから第1回の支払期日までの間に時間的余裕を確保すること
合意書の取り交わしには、記名・押印して郵送する等、取り交わしに時間がかかり、双方の記名・押印が揃った時点で、第1回の支払期日が目前で、支払の準備に大慌てとなることもありうる。
それ故、合意書の取り交わし日付は、第1回の支払期日との間に時間的間隔を空けるようにすべきである。
1つの方法としては、第1回の支払期日を合意書の債務者代理人押印日から起算して何日目とか、最初に到来する月末とする方法がある。
上記とは逆に、既に弁済原資の確保ができている場合には、合意日から短期の内に一括弁済する約定をする代わりに、減額を求める方法もある。

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